「ああ」
柊がそう言うと同時に三人は立ち上がった。
「じゃあ俺らは先行くぜ。じゃあな。」
小鳥遊がそう言ってこの部屋から出て行った。
「じゃあ兄さん、私たちは里に行くってことで良いよね?」
「ああ。今から行くぞ。」
兄さんがそう言ったので、私は小さくはいと答えて立ち上がった。
それから、兄さんは鬼なら誰でも使える瞬間移動を使った。
かつて里だった場所で、母さんを探すために私のもう一つの能力を使った。
私のもう一つの能力とは、探したい鬼や人を頭に浮かべて生きていたら反応するという便利な能力だ。
「母さんか。何とかいけるかな。あまり記憶はないけど。」
「大丈夫だろう。お前ならできる。そうだろ?桜。」
兄さんにそう言われるとできる気がする。
「頑張ってみる。じゃあやるよ。」
私はそう言って、目をつぶり神経を集中させ覚醒した時の姿になった。
だが母さんを探しても反応はなかった。
「母さんに反応しないってことは、あの襲撃で死んだのかな?」
「そうだな。母さんは里の鬼を助けるために一人で向かっていったのだから。
仕方ない。生き残ったほかの鬼を探すしかないな。」
兄さんはそう言って私のほうを振り返って頷いた。
私は兄さんが頷いたのを見てまた神経を集中させようとした。
その時後ろから微かに足音が聞こえたのでそちらを見た。
「あなたは誰?」
そう言ったのは手に花を持った16歳ぐらいの鬼の少女だった。
「私はお前の同胞で桜だ。お前は誰だ?」
そう言うと少女は驚いた顔をして、言った。
「私はみさき。あなた達も鬼なの?」
「ああ、そうだ。だが、どうしてみさきはここに一人でいるんだ?」
そう言うとみさきは嬉しそうな顔をして、答えた。
「私が小さいころに里の襲撃があってお姉さんに連れだしてもらったの。きれいなお姉さんだった。」
「その人の名前分かる?」
「うん。分かるよ。お姉さんの名前は美里だよ。」
みさきがそう言うと、兄さんは驚いた顔をした。
「その人は生きているのか?」
兄さんが今まで見たことがないくらい興奮した様子で聞いたが、みさきは悲しそうな顔をして答えた。
「ううん。去年私の16歳の誕生日に死んじゃった。」
そう言ってみさきはうつむいた。
「そうか。死んでしまっていたか。あと1年みさきと会うのが早かったら、母さんに会えたのに。」
「兄さん、それって...」
「ああ、そうだ。美里は俺たちの母さんの名前だ。」