兄妹の鬼の先に待つもの





入隊試験なら好都合だな。住むとこ無かった訳だし。

「やあっ!」

中ではいろんな掛け声が飛び交っていた。

「おいテメェらちょっと用があるから、道場を空けてくれないか?」

「分かりました!」

「何を始めるんだろう。」

道場には納得した声や、何をするかわからないと言う声が聞こえ騒がしくなる。

「斎藤!ちょっといいか。」

「はい。何でしょうか副長。」

「こいつの相手をしてほしいんだが。」

「俺でよければ。」

「じゃあ決まりだな。神崎、斎藤とやれ。」

「はい。」

斎藤ってことはやっぱり斎藤一だよね。

斎藤さんは左構えだったよね。
ちょうど良いや。私も左だし。

「よろしくお願いします。」

「土方さん。始めちゃってくださいよ。」

いつも思うが、沖田さんって土方さんにたいして軽いよね。

「両者構えて・・・始め!」

そして試験が始まった。
皆(斉藤以外)驚いてる。
私と斎藤さんは同じ左構えだしね。

まあ、そんなことはどうでも良くて。
この人隙がない。

しばらくの間お互いに睨みあっていると、斉藤さんが先に攻撃を仕掛けてきた。

「あんたが来ないなら俺から行く。」

しばらく攻防を繰り返して、私は斎藤さんに一瞬の隙があるのを見逃さなかった。

しかし、あと少しのところで防がれてしまう。

もう少しだけ本気出そうかな?

ピョン

道場にいた人たちは何が起きたのか分からず周りをキョロキョロとしていた。

いきなり私が目の前からいなくなったのだ。

また私がみんなの視界に入った時、すでに勝負は決まっていた。

私は斎藤さんの後ろから首筋に木刀を当てていた。

「土方さん勝負付きましたよ。」

「あ?ああ。勝者神崎!」

「斎藤さんが負けるなんて。」

「あいつすごい。」

「ふー、こんなに力出したのなんて何年ぶりだろう。まぁ本気は出せなかったけど。」

「嘘だろ?あれで本気じゃないとか。」

汗を拭っていると沖田さんが近づいてくる。

「どうしました?沖田さん。」

「君が本気の時はどんな技を使うの?」

「ああ。自分は三段突きですね。」

高校剣道に三段突きはないのだが、新選組が好きだった私は沖田さんの三段突きに憧れて特訓を繰り返していた。

「左構えの三段突きかぁ。凄いね、僕ともやってみようよ。」

「いいですよ。たしか沖田さんも、三段突きが得意でしたよね?」

「そうだね。」

沖田さんとの試合の準備を始めようとしたところで土方さんが話しかけてきた。

「総司との試合はまた今度やれ。とりあえずお前は試験合格だ。
今から幹部全員俺の部屋に来い。桜、お前もだ。」

武道場中に響く声でそう言った。