「お前は鬼だ。それは知っているな?」
兄さんがあまりにも真剣な顔で話しているから、私も背筋を伸ばし丁寧な言葉で返事をした。
「はい。」
「もとは父さんは鬼の里の頭領だったんだ。この時代のな。そして里は人間に狙われた。
理由は父さんが昔幕府のお偉いさんに戦に出て東軍の援助をしてくれと頼み込んできた。勿論父さんは断った。静かに暮らしたいから手助けは出来ないと。なのに人間は鬼は人間の驚異になりかねない、そう思ったのか里を滅ぼしにかかった。鬼の里の者達は戸惑い走り回った。父さんや母さんの制止を無視して人間に襲いかかっていった。
だが里が襲われたときの人間の数は二千五百人、里の鬼は五百人だった。鬼が人間より強くたって圧倒的な数には勝てっこなかった。だから里の鬼のほとんどが死んでいった。
その時里で二番目に強かった母さんが、皆を守るように人間の前に立ちはだかり敵を倒していった。
父さんに“この子達のこと頼んだよ”とそう言い残して。だからあの女は父さんがただ結婚しただけの血の繋がりのない母親だ。」

