翌朝目覚めた私は部屋を出て兄さんの部屋へ行った。

コンコン

「どうぞ。」

ガチャ

兄さんの部屋に入ったとたんに、昨日とは違う匂いがした。
何だか甘い香りだ。

「桜もう目が覚めたのかい?」

「うん。それよりこの匂いは何?随分と甘くていい香り。」

そう言うと兄さんは少し驚いたような顔をして話始めた。

「桜は此処で一日寝ただけでこの匂いに気づいたんだね。
この匂いは昨日君が来たときにも香っていたよ。」

「どういう事?私が昨日来たときにはこんな匂いはしなかったよ?」

「いや、してたんだ。
つまりそれは桜が本物の鬼として目覚めた証拠。」

そう言い兄さんは少し悲しそうな顔をして話始めた。

「この匂いと言っても俺は少しも感じないんだ。この匂いは君の部屋から廊下そして俺の部屋まで続いていた。
そうだろう?」

兄さんにそう言われそう言えばと思い出した。

「うん。起きたときからずーっとしてた。」

「この匂いは母さんの血の匂いだよ。」

「えっあの女の?」

「いや、俺と桜の母さんはアイツじゃない。だが父さんは死んだあの人だ。」

「どういう事?」

私がそう聞くと兄さんは辛そうな顔をして

「お前にあったら必ず言わなければならないとは思っていたが、こんなに早く話さなければならないなんて思わなかったな。


兄さんはそう言ったきり喋ろうとしなかったが、決心したように私の瞳を見つめてきた。