「お前は、あの時の女鬼ではないか。あの野蛮な浪士集団はどうしたのだ?」
そんな声が聞こえて後ろを振り向いたら、そこには池田屋にいた柊と言う鬼がいた。
「お前こそあの時の天羽や小鳥遊はどうした?」
そう言うと柊はいきなり笑い出した。
「俺のような成人した男が散歩に出るだけでお目付け役が必要なのか?」
「それを言うなら私だって、あんな奴等に守ってもらわなくても生きていけるさ。」
私がそう言うと、柊は驚いた様子で私を見てきた。
「お前あの屯所とやらを出てきたのか?」
「お前には関係ない。」
それもそうだなと柊は言ってこちらに近づいて来た。
「なんだ?」
「では、泊まるところが無いのだな?」
「ああ、それがなんだ?」
「お前はどうするつもりなのだ?行くところがないなら俺が住んでいるところに来ないか?」
「誰がお前に「お前の兄は俺のところにいるぞ?」
柊は私の言葉に被せて兄の居場所を語ってきた。
今の今まで兄と言う存在は出てきていないのだが、私には2年前にいきなり姿を消した兄がいた。
まさか兄さんもこちらに来ていて、しかも柊のところにいるなんて。
だが何故柊は私と兄の関係を知っているんだ?
そんな疑問はすぐに解決された。
「お前に兄がいたのはあいつが教えてくれたから知っている。
お前の兄 神崎荵カンザキシノブがな。」
「荵が私の事を話したのか?」
「ああ、そうだ。」
何度も柊にそう聞き、何度も同じ答えが返ってきた。
私は兄さんが私の事を話したと言うことが信じられなかった。
何故なら兄さんは本当に信用した一部の奴にしか家族のことを話さないからだ。
兄さんは柊達の事を信用したと言うことか。
兄さんが信用した奴なら必ず安全と言い切って良いだろう。
鬼は治癒と破壊的な力以外に一人一つは能力を持っている。

