そんな何日か前の考えを消し去るかのように、廊下の向こう側から桜の兄貴の気配がした。
俺は無意識に刀に手を添えていた。
案の定、その気配は部屋の前で止まり障子が勢いよく開いた。
俺はすぐに刀を抜こうとしたが、後ろにいる桜を見て抜くのをやめた。
「桜?」
俺はそう問いかけたが桜からは何の感情も読み取れない。
「桜、挨拶がわりにやってやれ。」
「はい。」
桜の兄貴がそう言うと、桜はそれに返事をして刀を抜いた。
桜は刀を抜くと同時に俺に向かってきた。
俺はそれを咄嗟に抜いた刀で防ぎ、距離をとった。
俺は桜にとってもう要らない存在なのか?
俺はこんなに想っているのに、君はどうしてそう平然とした態度なんだ?
そんなことが頭に過り、桜の瞳をみつめてた。
桜の瞳を見ていて何かがおかしいと感じた。
桜の瞳から光が消えてしまっている。
どうしたのか。
感情を持たない人形のような瞳だった。

