ご飯も食べ終わり、今日の巡察は夜なので夕方まで部屋にいることにした。
部屋に戻るとすぐに刀の手入れをして、切れ味が良くなったから畳に寝転がった。
それにしても藤堂を救ったり、沖田の病気を治したから歴史が変わったのかな?大政奉還があるはずの10月14日はだんだんと近づいてきている筈なのに、皆落ち着いている。
ずーっと新選組が正義だったら良いのにな。
そんな事を考えている間に眠ってしまった。
起きたときにはもう昼過ぎで、回りを見回すと何故か土方と目があった。
「あれ?私の部屋になんで土方がいるの?」
「お前と出掛けたいところがあったんだ。
だが障子越しにお前を呼んでも返事がないから覗いてみたら寝ていた。だから起きるのを待っていた。」
「ごめん!気づかなかった。今から行けない?」
「明日にしよう。明日は非番だよな?夜に行く。起きとけよ。」
土方はそう言って私の部屋から出ていった。
初めてのデートになるかな?
そこで色々考えていたらいつの間にか巡察の時間になっていた。
急いで用意をし、門に到着するとどうやら一番最後だったようだ。
「すまない!」
私はそう言って浅葱色の羽織りを羽織って後ろに並んで歩いた。
行き道は何ともなかったのだが、帰り道に屯所の回りをうろちょろする気配があった。
「止まれ。」
私がそう言うと斎藤は静かに気配のする方へいつでも抜刀できる準備をしていた。
私も同様に刀に手をかけると、気配に向かって話しかけた。
「だれだ?」
そう言うと暗闇から一人の男が出てきた。
「俺の顔をもう忘れたのかい?桜。」
?!なぜここに?
「兄さん!どうしたんだ?」
「勿論お前を人間の元から取り戻すために決まってるだろう?」
兄さんはそう言って私に手を伸ばした。
私は一歩下がって
「屯所に戻れ。」
三番組にそう伝えた。
「俺は残る。」
「お前も屯所に戻れ、二人で話したい。」
私はそう言って、斎藤の返事も聞かずに屯所の裏へ回った。
「私は戻る気はない。」
「なぜ?人間どもに復讐をすると誓っただろう?」
兄さんは以前の兄さんではなかった。
今の兄さんは瞳の奥に狂気を孕んだ鬼だった。
「私は今好きな人がいる。その人のお陰で毎日が楽しいの。」
「あの土方とかいうやつだな?そうか。あいつを殺せばお前はこちらに戻ってきてくれる。そうなんだよな?」
兄さんはぼそぼそとそう呟いて、歩き出した。
「兄さんどこに行くの?」
私は嫌な気がして兄さんにそう問いかけた。
「土方を殺す。」
兄さんはそう言って屯所の表の門に向かって走り出した。
「兄さん!ダメ!」
私はそう叫び今いる所の塀を飛び越えて、屯所内に入った。