「斎藤、入るぞ。」

私は斎藤の返事を待たずに障子を開け、部屋のなかに入った。

「なんだ?」

斎藤は前と同じ口調で用件を聞いてきた。

「3番組に入るから、巡察の日を教えてくれないか?」

「ああ、わかった。」

そのあと斎藤とは事務的な話が続き、3番組の仕事の説明を一通り教えてもらってから斎藤との間に沈黙が訪れた。

私はそろそろ自分の部屋に戻ろうと思って腰を上げた瞬間に

「神崎、少し座ってろ。茶でも淹れてくる。」

斎藤はそう言うと、自分の部屋を出ていった。

斎藤が戻るまで部屋を見回していた。

相変わらず何も置いてないな。何の面白味もない殺風景な部屋だ。

そんなことを考えていると、すぐに斎藤は戻ってきた。

「熱いから気をつけて飲め。」

「ああ。」

斎藤はさりげなく私のことに気を使ってくれる。裏切った今でもそうだ。
やっぱり新選組の中にも良い人はいるんだな。