『しっかりしろよ!ほら、歩けっての!』

普段無理なんてしねぇのに、どうしたんだよ俺。

いや、でも、わかってるんだ。なんでたってのも。原因も。

でも、多分まだ、落ち着いてない俺の心はそんなことすらできないんだ。

彼女が、ショウマの横に座ったときには、もう酒に手が伸びてた。

何回も定員をよんで、注文を繰り返す。

それにつれ、だんだんと強くなっていく度数。

シラフなんかじゃ絶対にしねぇ。

手なんて合わせるなよ。

いつもなら、笑うこともあまりないショウマが笑ってる。

みんなそれにはびっくりしてた。

けど、俺はそれよりももっと後悔していた。

彼女は、最初から、ショウマが好きだったんじゃないかなっ…。

だから、ハルにくっついて、ライブにも独りできた。

だったら、それにもっと早く気付くべきだっんだ。

『あーもー、なんなんだよ。』


ボソッと零した弱音はハルに拾われた。

『何が?』

目の前に水を置いてくれてる。

けど、それにすら手を伸ばしたくない。

今はこの虚ろな意識でいたかった。


黙ってただ俺が次の言葉を出すのをじっと待ってるハル。

沈黙に耐えれなかったのは俺だった。

『俺さ………あやかちゃんのこと好きかもしんねんだよ。』


こんなこと言ったらハルに怒られっかな?とか考えてたけど

そいつは知ってた。それで?みたいな涼しい顔をしてた。

なんだ。勇気だした俺恥ずかしいじゃん。

『なんかさ、どーしよっーーって…なんか初めてかも知んねぇんだよ。こーゆーの』


『どんなことが?』


一瞬いうのをやめようかと思った。

けど、まっすぐこっちをみてくるハルの目が真剣だったから俺は続けた。

『付き合う前の女の子に嫉妬したり、どうしようもなく俺のもんにしたいって思うのが。』

『俺さぁ、今まで全部女の子だったんだよな。告白も別れようってゆうのも…その度にずっと頷くだけの俺でさ』

滅多に吸わない煙草に手をのばす。

久しぶりに吸い込んだ毒素は案外気持ちのいいものだった。

『だからかなー。どっかで綾花ちゃんが好きって認めたくなかったのかな?でもさー、やっぱり無理だった。』

一度視線をしたに落とす。

『おれ、あの子のこと好きだ。』


まぁ、こいつには殴られる覚悟くらいはいるだろうけど。


まだ長い煙草を灰皿に押し付ける。

赤かった部分がただの灰になっていく。