──それは中3の春におきた。




なんの変化もない毎日の繰り返し。私は『恋』の訪れなんて、全く期待していなかった。



「ただいま〜。…典子、帰ってきてるの?」

「お帰り。学校、今日は短縮だったの。」

今帰ってきたのはあけちゃん。私のお姉ちゃんで、今は大学一年生。私とは小さい頃から仲良しで、一番頼りになる存在。


「あけちゃん、体調大丈夫…?」

「うん。もう大分楽になったし…ほら、クマもとれたでしょ?」

あけちゃんは、最近仲良しの友達を事故で亡くしていた。『──親友だった』って、あけちゃんは言っていた。

「無理しないでね。…私にできることなら何でもするから。」

私がそう言うと、あけちゃんは少し寂しそうに笑った。

「…ありがと。」

その笑った顔には疲れが表れている。毎日、通夜とかお葬式とかで大変だから…。

そんなあけちゃんをみて、私はあることを思い付いた。

「あけちゃん!私が今日の家事ぜ〜んぶやるからベッドで休んでて!!」

「え…?で、でも典子って料理とか作れないでしょ。私は平気だから。」

「いいから!!ほら、寝室に直行ー!」

私は無理やりあけちゃんを寝室に行かせた。

「典子…、ごめん。やっぱり寝るね。」

「うん、心配しないで!夕食になったら起こすから、それまでしっかり休んでてね。」

私はそう言ってからエプロンをつけて、気合いを入れるために腕をまくった。なんだかお母さんになった気分♪

「よしっ!やるぞー!」

一人でガッツポーズを取ると、早速家事を始めた。実はあんまり料理とか作ったことは無かったけど…あけちゃんに少しでも楽になってほしいから──。



洗濯物たたみ、アイロンがけ、夕食作り…。私自身がビックリするくらい順調にやることがてきた。

「あとは10分煮込むだけ。やった、成功かも…!」

一人で喜んでいると…


『ピンポーン』

──玄関のチャイムが鳴った。