眠り姫と総長様 II


「そう。最初から居ない。

普通出世出来るなんて嬉しい筈なのに、ウチの組員は副組長をやりたがらない。

何でだと思う?」


誰も、副組長をやろうとしない。


「……どうしてだ?」


「あたしね?

ほんの一部の人間と、篠原組の人間にこう言われてるの。




"篠原組の副組長" って。」





それが、あたしが大人から恐れられてる一番の理由なんだよ。湊。



「……………」


予想通り、驚いて固まっている湊。



組員は、皆口々に言う。


ー「お嬢より上に立つなんて無理です!」
ー「組長を支えられるのはお嬢しか居ません!」
ー「お嬢しか無理なんです!」


みーくんを支えられるのは私だけ。

確かに、みーくんと同等に接する事が出来るのは私位だと思う。


組長と副組長には、お互いが信頼していないとなれない。


候補に一度挙がったしーくんは、
「え?俺?俺は組長の側近で充分だから。」と、あっさり辞退した。



実力主義のこの世界で、特に篠原組は変わっている。


組長と同じ権力を持つのが私。
次に隆斗で幹部となる。


普通、お嬢なんて幹部と同じ位の権力しか持たない。

もしくはそれ以下だ。

てか、組長に並ぶ人間なんて居ない筈なんだ。


実力があるから上に立つ。


私は異例中の異例。


だから、誰も私の上の立場になろうとしない。


「驚いた?」


「あ、あぁ……」