「そう。最初から居ない。
普通出世出来るなんて嬉しい筈なのに、ウチの組員は副組長をやりたがらない。
何でだと思う?」
誰も、副組長をやろうとしない。
「……どうしてだ?」
「あたしね?
ほんの一部の人間と、篠原組の人間にこう言われてるの。
"篠原組の副組長" って。」
それが、あたしが大人から恐れられてる一番の理由なんだよ。湊。
「……………」
予想通り、驚いて固まっている湊。
組員は、皆口々に言う。
ー「お嬢より上に立つなんて無理です!」
ー「組長を支えられるのはお嬢しか居ません!」
ー「お嬢しか無理なんです!」
みーくんを支えられるのは私だけ。
確かに、みーくんと同等に接する事が出来るのは私位だと思う。
組長と副組長には、お互いが信頼していないとなれない。
候補に一度挙がったしーくんは、
「え?俺?俺は組長の側近で充分だから。」と、あっさり辞退した。
実力主義のこの世界で、特に篠原組は変わっている。
組長と同じ権力を持つのが私。
次に隆斗で幹部となる。
普通、お嬢なんて幹部と同じ位の権力しか持たない。
もしくはそれ以下だ。
てか、組長に並ぶ人間なんて居ない筈なんだ。
実力があるから上に立つ。
私は異例中の異例。
だから、誰も私の上の立場になろうとしない。
「驚いた?」
「あ、あぁ……」


