眠り姫と総長様 II


もう、盗聴なんてしなくても中の様子はここから聞こえる。


……無駄に声だけデカイから聞き取りやすい。


りっくんを殺ったクズは、海くんにボロボロにされてるけど……


「あの男、後でみっちり制裁する。」


死にたくても死ねない。

そんな地獄を味わせてあげよう。


りっくんを殺るなんて、私の怒りが更に加速するじゃないか。


ただでさえ、殺鬼の総長に殺意を抱いてると言うのに。


「……お嬢、組員が怖がってます。」


「え?あー、ごめんごめん。」


いつの間にか、顔が怖くなってたらしい。



「しねぇぇぇぇぇ!」



あ、なんか倉庫から忌々しい声が聞こえる。


「はい、突撃。睦月は銃で脅す。」


て事で、組員を後ろに引き連れて倉庫の中に入る。


湊に銃口を向けている殺鬼の総長を怯ませる為、睦月は一発天井に発砲する。


久しぶりに見た皆は、ボロボロ。


あー、ダメだ。


周りの音を、全てシャットダウンする。


そうしないと、今すぐにでも殺鬼の総長を殺しそうだ。


自分でも、何を喋っているのか分からない。


ただ、怒りに任せて話している。


取り敢えず、湊の隣に久しぶりに立ってみた。


「………未衣」


あぁ、これだ。


いつも、私の支えになってくれる大好きな声。


それだけで、少し心が落ち着いた。


けど、殺鬼の総長への怒りが収まった訳ではない。