もう、盗聴なんてしなくても中の様子はここから聞こえる。
……無駄に声だけデカイから聞き取りやすい。
りっくんを殺ったクズは、海くんにボロボロにされてるけど……
「あの男、後でみっちり制裁する。」
死にたくても死ねない。
そんな地獄を味わせてあげよう。
りっくんを殺るなんて、私の怒りが更に加速するじゃないか。
ただでさえ、殺鬼の総長に殺意を抱いてると言うのに。
「……お嬢、組員が怖がってます。」
「え?あー、ごめんごめん。」
いつの間にか、顔が怖くなってたらしい。
「しねぇぇぇぇぇ!」
あ、なんか倉庫から忌々しい声が聞こえる。
「はい、突撃。睦月は銃で脅す。」
て事で、組員を後ろに引き連れて倉庫の中に入る。
湊に銃口を向けている殺鬼の総長を怯ませる為、睦月は一発天井に発砲する。
久しぶりに見た皆は、ボロボロ。
あー、ダメだ。
周りの音を、全てシャットダウンする。
そうしないと、今すぐにでも殺鬼の総長を殺しそうだ。
自分でも、何を喋っているのか分からない。
ただ、怒りに任せて話している。
取り敢えず、湊の隣に久しぶりに立ってみた。
「………未衣」
あぁ、これだ。
いつも、私の支えになってくれる大好きな声。
それだけで、少し心が落ち着いた。
けど、殺鬼の総長への怒りが収まった訳ではない。


