眠り姫と総長様 II


彼氏がピンチになるまで、知っていて助けない私はとても冷たいと自分でも思う。


そんなんだから、大人にも怖がられてるんだと思う。


でも、抗争に感情なんて必要ない。


必要なのは、絶対に勝てると言う勝算のある作戦だけ。


殺鬼の総長だって、山崎翼と接触はしたけど所詮は表の人間。


ヤクザだって、誰かれ構わず手を出して良い訳じゃない。


表の人間には手を出さない。


これは掟だ。


だけど……拳銃を持ってたら別。


山崎翼から拳銃を受け取ってる殺鬼の総長は、あのサルから湊を殺すように言われてる。


それを知った時、すぐにでもサルを殺してやろうかと思った。


でも、私は参加出来ないからなー。

残念で仕方ない。


車から降りて、倉庫前に行くと組員が整列して待機していた。


「お嬢、ご指示を。」


私に着いてきてくれる、優しい組員。


「後で、状況を見ながら指示を出す。
取り敢えず、"道を作れ。"」


「「「お嬢の仰せの通りに。」」」



そう。

道を作って。


"龍神が勝つ道を。"

勝利への道を。



多分この後、私に近づいたら誰であろうと傷つけてしまうから。


湊を殺そうとする殺鬼の総長を、殺そうとしてしまうから。


自分を抑える為には湊達であれ、近づいてはいけない。


"誰も近づかないように、私の通れる道を作って。"



"道を作って。"


この二つの意味が込められた言葉を、組員達は気づいている筈だから。