彼氏がピンチになるまで、知っていて助けない私はとても冷たいと自分でも思う。
そんなんだから、大人にも怖がられてるんだと思う。
でも、抗争に感情なんて必要ない。
必要なのは、絶対に勝てると言う勝算のある作戦だけ。
殺鬼の総長だって、山崎翼と接触はしたけど所詮は表の人間。
ヤクザだって、誰かれ構わず手を出して良い訳じゃない。
表の人間には手を出さない。
これは掟だ。
だけど……拳銃を持ってたら別。
山崎翼から拳銃を受け取ってる殺鬼の総長は、あのサルから湊を殺すように言われてる。
それを知った時、すぐにでもサルを殺してやろうかと思った。
でも、私は参加出来ないからなー。
残念で仕方ない。
車から降りて、倉庫前に行くと組員が整列して待機していた。
「お嬢、ご指示を。」
私に着いてきてくれる、優しい組員。
「後で、状況を見ながら指示を出す。
取り敢えず、"道を作れ。"」
「「「お嬢の仰せの通りに。」」」
そう。
道を作って。
"龍神が勝つ道を。"
勝利への道を。
多分この後、私に近づいたら誰であろうと傷つけてしまうから。
湊を殺そうとする殺鬼の総長を、殺そうとしてしまうから。
自分を抑える為には湊達であれ、近づいてはいけない。
"誰も近づかないように、私の通れる道を作って。"
"道を作って。"
この二つの意味が込められた言葉を、組員達は気づいている筈だから。


