未衣に駆け寄ろうとした湊は、足を止めた。
「ぁ……ぁ……」
「ねぇ、答えてよ。
私、今ね?
自分抑えるのに必死なんだ。」
ゆるり、ゆるり、
俺たちの方に…正確には、殺鬼の総長と距離を詰めていく未衣。
……いや、篠原組のお嬢。
語尾は伸ばしてないけど、口調はいつもと同じ筈。
ニコニコしている筈なのに、背筋が凍る程冷たい目。
前に湊が刺されそうになった時に感じた未衣の殺気とは、比べ物にならない位の殺気。
「さっさと答えてよー。
殺したい衝動、抑えてるんだから。」
楽しそうに弾んだ声の中に感じる、刺すように鋭い声。
倉庫は、未衣によって支配された。
未衣の元へ行きたかった湊は、
"行かなかった" のではなく、
"行けなかった"んだ。
誰も、未衣に近づく事は出来ない。
言わずとも、未衣が"本気"なのだと分かる。
未衣に攻撃しようとする殺鬼の下っ端を、容赦なく潰してく組員。
自然と、道が作られている。
海の横を通り、夏輝の横を通り、俺の横を通り、
「未衣……」
「湊……久しぶり。」
湊の隣で脚を止めた。


