眠り姫と総長様 II


未衣に駆け寄ろうとした湊は、足を止めた。



「ぁ……ぁ……」



「ねぇ、答えてよ。

私、今ね?

自分抑えるのに必死なんだ。」




ゆるり、ゆるり、


俺たちの方に…正確には、殺鬼の総長と距離を詰めていく未衣。

……いや、篠原組のお嬢。



語尾は伸ばしてないけど、口調はいつもと同じ筈。


ニコニコしている筈なのに、背筋が凍る程冷たい目。


前に湊が刺されそうになった時に感じた未衣の殺気とは、比べ物にならない位の殺気。


「さっさと答えてよー。


殺したい衝動、抑えてるんだから。」



楽しそうに弾んだ声の中に感じる、刺すように鋭い声。



倉庫は、未衣によって支配された。


未衣の元へ行きたかった湊は、
"行かなかった" のではなく、
"行けなかった"んだ。


誰も、未衣に近づく事は出来ない。



言わずとも、未衣が"本気"なのだと分かる。


未衣に攻撃しようとする殺鬼の下っ端を、容赦なく潰してく組員。


自然と、道が作られている。


海の横を通り、夏輝の横を通り、俺の横を通り、


「未衣……」


「湊……久しぶり。」


湊の隣で脚を止めた。