眠り姫と総長様 II


未衣は自室に入ってすぐに、電話を掛けた。


「………」


ー「こんな時間に電話なんて珍しいな、未衣。俺が恋しくなったんか?」


自分から電話をしておいて相手から喋らせている。


「………キッモ。死ね。」


ー「酷いなぁ。ちゃんと名前で呼んでぇな。」


「黙れサル。」


ー「サルやなくて、山崎翼やろ?」


電話の相手ーー敵である山崎翼の声を聞いた未衣は吐き気がした。


生理的に受け付けられないらしい。


ー「それでこんな時間にどうしたん?
あ、高宮湊と別れたとか?」


「んなわけあるか。」


そこは即答らしい。


ー「じゃあなんや?」


「お前らが送り込んだネズミ、喰ったから。」


ー「……ネズミ?」


「今月中に戦争だ。」


ー「そりゃまた急やな。」


「……嫌いな奴ほど苦しめたいんでね。」


それだけを言って電話を切った。


未衣が山崎翼を潰したい理由なんて、いくらでもある。


個人的に嫌いだという理由もあるが、一番はやっぱり……


「湊達を傷つけるのは許さない。」


最愛の仲間を傷つけられた事だ。



随分、偽善者になったものだと、未衣は自嘲した。