ーーーーーー6年前
篠原組にある男が入った。
「トモヤスって言います!」
当時25歳だったトモヤスはとても明るく人懐っこい性格だったからか、すぐに篠原に馴染んだ。
だけど、私はコイツが篠原組に入った時点で警戒していた。
何となく、コイツは敵だと、そう感じた。
特に誰に言うわけではなかったけど、私の中で様子見って事にした。
怪しい動きがあればすぐにみーくんに知らせる。
案の定、トモヤスは篠原に来て1週間で怪しい行動し始めた。
「あ、お嬢!
組長って彼女とか好きな人が居るって聞いた事ない?」
まるで、恋話をする女のテンション。
はっきり言ってキモかったのを今でも覚えてる。
「みーくんに彼女?居るよ!」
「どんな人?
名前とか分かる?」
ただの組員であるトモヤスが、組長のプライベートに口を挟むのは許されない。
それがどうだ。このバカな男は。
子供の私だから話してくれるとでも思ったんだろう。
他の組員に聞くのは怪しまれるから。
「えーっとねぇ?
可愛くて、優しくて、背が高くて、オシャレなの!」
こいつがスパイかどうか……
一種の賭けをしてみた。
「へぇー、そうなんだ!
名前って分かる?」
「サキちゃんって言うのー!」
みーくんに彼女なんて居ないけどね?
「お嬢、ありがと!」
嬉しそうにスキップをして去っていったトモヤス。


