眠り姫と総長様 II


正直言って、俺は信じたくない。


何度も言うようだけど、未衣はそんな事するような奴じゃないって知ってるから。


一緒に住んだ事のある俺だから言える事もある。



何も知らなかった家事を覚え、
卵の割り方すら知らなかった料理を基礎から出来るようにして、
決して弱い部分を見せず、涙を流さない。

最初の頃なんて、男が怖いくせに強がって何でもない風にしていた。



人一倍努力して来た未衣を知っているから……

自分の居場所を探していた未衣を知っているから……


それを自分から今の幸せを壊す事なんて有り得ない。



少なくとも俺ならしない。



13時。


未衣が来ると言っていた約束の時間。


どんなに忙しくても、時間厳守の未衣は1分もしないで来ると思う。





俺たちの心情なんて知らずに。