嗚咽交じりに言ったことを、仁科さんは黙って聞いてくれた。
何も言わず、急かすこともせず。
ただあたしを、後ろから抱きしめてくれているだけ。
手は冷たいのに。
抱きしめられるとあったかくて。
仁科さんらしい大人っぽいにおいがして。
そのせいで、また涙が溢れてしまう。
そんな涙を、仁科さんはその長い指で拭ってくれた。
「…辛かったね……」
ギュッ…と、まるでガラスを抱きしめるように。
優しい手つきで、仁科さんはあたしを抱きしめてくれる。
あたしは首元にある仁科さんの腕に、しがみついた。
「思い切り泣いて良いよ。
思い切り泣いて、思い切り笑えば良い。
そうしたら必ず、美音ちゃんは笑えるから」
仁科さん……。
「泣くのは悪いことじゃないよ。
人は誰しも、生まれてきた時泣くんだから。
泣くのは恥ずかしいことじゃない。
もっと胸を張って、子どものように泣きじゃくれば良い」
あたしは仁科さんの言葉の通り。
思い切り泣いた。
子どものように、声を上げて……。


