恋人戦争





「…………」


「……………」


「ご注文がお決まりになりましたらお呼びくださいませー」

「「はい…」」






なんか気まずさ増してないか!?


「何食べる?」

とりあえずこの沈黙を破るべく、私は逢沢に話しかけた。


私はグラタンがいいかなー。

いつもはハンバーグなんだけど、今はグラタンの気分…。


「……グラタン」

「!!私も!グラタン!」


あ。

逢沢と思っていることが一緒で思わず大声をあげてしまった。

全員ではないが、近くの他のお客さんがこっちを見ている。

恥ずかし…

てか、また怒られそうだ。


「…うるさいよ」


ほらきた。


「グラタンぐらいでそんな喜ぶ?」

「…………」


と思ったんだけど……



気づいてしまった。


「………逢沢、顔に出てるよ」

「え?」

「私と一緒のもの頼もうとして嬉しいんでしょ!」

「はあ?あんた…自意識過剰…」




ねえ、逢沢



今、顔が少し、笑ってるよ?


でも冗談で言ったつもりなのになー、こんな顔赤くされると……

「………私の魅力に落ちた、か」

「勘違い女」

「なんだとコノヤロー‼」


ここはノリツッコミの場目だろ‼


って、私は彼氏に何を求めてるんだ。




でも。よかった。

少しはマシな雰囲気になった。



私はこの流れで店員を呼び、二人分のグラタンを注文した。


「…あんた、グラタン好きなの?」


お。

久々に逢沢から質問された気がする。


「普通、今の気分がグラタンだっただけ」

「ふーん、俺も」


ほーお、逢沢も今の気分はグラタンだったんだ。

これはすごいな。


ちょっと意気投合した感じ。


「てゆーかさ、何で逢沢は私のこと“あんた”って呼ぶの?」


「唐突だな」


「前から思ってたんだよね、初対面のときから言ってたじゃん」


「そーだっけ、覚えてない」


おいおい、自分から告白してきたくせにあの時のこともう忘れてるのかよ。

まあ、私もそんな詳しく覚えてないけどさ。




こういう何気ない会話から、私と逢沢がお互いに何とも思ってないことが分かるよね。




「まあ、俺はあんたに協定さえ守ってもらえばいいよ」


「はいはい、分かってますよ」



私と逢沢の間に恋心なんてないことはとっくに分かってる。

これはお互いのための協定なんだから。


「っていっても、私の場合何の効果もないんだけどね…」

「振り方の問題じゃない?」

「私結構きっぱり言うんだけどなー」


なんて。

そんなよくわからない会話をしているとグラタンが運ばれてきた。