「おっ!杏奈じゃん!」


やっぱりバレンタイン前日となると、光輝のテンションも高い。

今はフリーな光輝だ。

明日は靴箱も机の上も、幸せなポストと化していることだろう。



『やーほ。慶太くんは?』

「あ?なんか俺のためにチョコ作ってくれるって帰った。」


そんな光輝の話に反応したのは葵で、いきなり笑い出す。


「はははっ!田口ってそんなあほなの!?女子じゃん!」


そんな葵を見て、私と光輝は目を合わせる。


この2人、すこしずついい感じに成長してるかもしれない。



『これはどーでしょうか!』

「もうすぐな感じもしているのではないか!」

『ですよね親方!わたくしもそう思います!』

「ふむ、意見があったな!」



ふざけた会話をしていても、葵はしばらく笑い続けていた。



「そいや、杏奈!今年も用意してんだろーな!」

『してないよ。』

「はぁああああ!?」


少し嘘をついてみると、光輝はそれまでのわくわく顔が一気にしょんぼり顔になる。


「なんでだよ!」

『だって、光輝くん、他の人にもらえるもん。私からの何ていらないでしょう?』


かわいい子になりきって少し演技続行。