巡逢~茜色の約束~

教室の扉を開いたのと同時に、チャイムが鳴り響いた。

例の如く誰にも見向きもされず、自席へ向かう。



「……」



次、生物だったっけ?

来たはいいけど、やる気起きねえ。



「……」



鞄を机の横に掛け、席を立つ。

雨は相変わらず窓を激しく打ち付けていたけれど、それでも俺は、教室を飛び出して屋上へと向かった。



屋上は当たり前のように、ずぶ濡れだった。

それでも、ペントハウスの陰だけは唯一雨が凌げることを、俺は知っている。



「……さみ」



10月になり、気温は急激に下がったように思える。

雨に濡れて、少し冷たくなった指先。



「このまま……体温なんて、無くなっちまえばいいのに」



なんて。