巡逢~茜色の約束~

学校の門を潜ったのは、1時間目の授業が終わる頃だった。

職員室で手続きをして教室に向かう途中、鞄の中のケータイが珍しく震えた。

取り出したケータイの画面には、【自宅】の文字。

そこからかけてくる人なんて、1人しかいない。



「……もしもし」

『あ……もしもし、千速くん……?』



電話越しに聞こえた、いつもより少し低く気怠げな美生の声。



「うん。どうした、なんかあった?」

『ううん……。ただ、お粥ありがとう、美味しかったよって……少しでも早く伝えたくて……。それだけなの。……ごめんね』



馬鹿。

なんで謝るんだよ。



「今日は家事とか気にしなくていいから、休んどけ」

『……ごめんね、ありがとう。学校、頑張ってね』

「……おう。じゃあな」



電話を切り、今度こそ教室へと足を進める。