巡逢~茜色の約束~

どうしてここまで声を荒げてしまったのか、感情的になってしまったのか、自分でもわからない。

わからないけど、嫌だった。

彼女の言葉が虚勢だということくらいは、容易に見破ることが出来たから。



「……慣れない生活で疲れたんだろ。今日は全部、俺がやるから」

「でも……」

「でもじゃねえよ。寝てろ」



体調悪いから、昨日あんなに元気なかったんだろうな。

理由がわかった気がして、何故だか少し、ほっとした。



「粥作って持ってくるから。待ってろ」



言いつつ、ドアに背を向ける。



人の為に料理を作るなんていつぶりだっけ。

昔は、帰ってくる筈のない親に喜んでもらいたくて、料理を作って待ち続けていたりもしたけど、それが無駄なことだと気付いたときから、自分のためにしか作らなくなった。