巡逢~茜色の約束~

「千速くん……?」



気怠げな、弱々しい美生の声。



「ごめん……ちょっと体調崩しちゃったみたい……」

「……大丈夫か?」



ドアの前に立つ俺には、そんな在り来たりな言葉しか掛けられなくて。

この戸を開く勇気を持ち合わせてなどいなかった。



「うん、大丈夫……。先着替えててくれる?すぐ……ご飯作るから」

「何言ってんだよ。声だけでも相当つらそうじゃねえか」

「大丈夫だよ……。気にしないで」



そんな声と共に、起き上がる音がする。

それを聞いた俺は、咄嗟に扉を軽く叩いた。



「いいから!いいから……大人しくしてろ」