ふらふらと歩き、フェンスへと辿り着く。

乗り出して下を覗き込んでみても、恐怖心なんて生まれてこなかった。



「父さんも母さんも……俺に見向きもしなかったこと、後悔すればいい……!」



いや……もしかしたら、気にも留めないかもなぁ。

なんて、自分で言って虚しくなる。



考えれば考える程汚いこの世界からいなくなることが出来るのなら、本望だ。

強い覚悟を胸に、柵を乗り越えるべく手をかけ──



「駄目だよ……千速くん」



……え──?



ここにいる筈のない彼女の声が耳に届き、俺の動きは完全に停止した。



いつかと同じシチュエーション。

あのときも、こんな風に真っ赤な空だった。