絞り出された声は震えていて。

今起こっていることの全てが理解出来ずに、ただ手が宙を彷徨う。



「千速くん、……ごめんね」



震える声でそう言って立ち上がった美生がリビングを逃げるようにして出て行ったのは、それからすぐのこと。

重苦しい空気だけがその場に残った。



「くそ……っ」



和やかだった誕生日パーティーは、遥か昔のことのように思える。



俺の言葉を拒絶されてしまったこと、やっぱり壁を作られてしまったこと。

笑顔も言葉も、何もかもをくれた美生がもうすぐ俺の手の届かないところへ行ってしまうこと──。

ただその現実だけが、俺の心を締め付けて、苦しかった。



美生と過ごす、何気ない時間。

そんな幸せな瞬間が、永遠に続けばいいって──ただ、それだけだったのに。