巡逢~茜色の約束~

巧く笑い続ける自信がないと逃げてきた自分が情けなくて、自分にこんな一面があったことを認めるのも嫌で。

自分さえ誤魔化せない程、大きな気持ちがあることに、まだ戸惑いを抱かずにはいられないけど、それでも俺は──。



「……っ」



項垂れていた顔を上げ、早足で桜井達が待つテーブルへと戻ると、丁度店員がオーダーを聞き終えたところだった。



「おかえり」

「お前遅いから、先に頼んどいたで」



勉強道具はいつの間にか綺麗さっぱり片付けられていて、ケータイなんかを触っているところを見ると、もう今日は勉強する空気ではない。

俺は席に置いていた鞄を持ち上げ、軽く手を合わせた。



「わり、俺今日はもう帰る」