巡逢~茜色の約束~

長年培った偽りを繕う術は、こういうときに便利だな。

自分の心を隠しきれないところさえ、何も変わっちゃいない。



「どこ行くどこ行く?」

「温水プール行きてえ」

「お、ええなぁ!俺も行きたい」



テストから逃げるかの如く進んでいく話に、俺は背を向けた。



「あれ、千速どこ行くん?」

「トイレ」



まだ、この感情に整理がついていない。





トイレに行くと言った手前取り敢えず中には入ったものの、特に用はなく。

徐に、ポケットの中に入れっぱなしだったケータイを取り出して画面を確認するも、気づかないうちに抱いていた淡い期待は、すぐに打ち消された。



「……当たり前か」



ふ、と自嘲する笑みが思わずこぼれる。