「……多分、2階の南側の部屋のクローゼットの中にあると思う。好きに探してくれ」

『うん、わかった!ありがとう』



電話口から聞こえていた美生の声は途絶え、代わりに無機質で規則的な音が耳に届く。

ふう、と息を吐き、俺は無意識にその場に座り込んだ。



ここ数日、人には言えない悩みが出来た。

それは、ある意味幸せな悩みとも言えるだろう。

充実しているからこそ感じられるそれに、俺は戸惑いを隠せないでいる。





「俺ジュース入れてくるけど」

「じゃあ俺のも頼む」

「了解」



グラスを両手に持ったクラスメートを見送り、俺達は再び教材に向かい合う。