話し終えたとき、美生は俺の腕の中で小さく震えていた。



どう思っただろう。

聞いて何の得にもならない、ただ重いだけの過去を知って。



話したことを後悔するわけじゃないけど、少しの罪悪感が募る。

ひゅう、と冷たい風が吹いたとき、美生が顔を上げた。

その鼻は赤く、目には涙が浮かんでいる。



「話してくれて……本当に、本当にありがとう」

「……っ」

「私は千速くんの痛みを理解してあげることは出来ないけど……無責任だと思うけど、それでも、言わせてね」



背中に回された美生の手が、俺の着ているトレーナーをぎゅうっと掴む。



「私、やっぱり千速くんの苦しい顔なんて見たくないよ。だから、もう苦しまないで……」