巡逢~茜色の約束~

それが尚更腹ただしくて、だけどその怒りをぶつける場所さえなくて。

親子、なんて言葉は、最も不釣り合いだと思ったよ。



一度……お前がうちに来てすぐの頃、ショッピングモールで会ったヤツいるだろ。

覚えてる?

アイツとは、シニアで一緒だった。

学校こそ違ったけど、レギュラーを狙ういいライバルだった。



アイツだけじゃない。

みんな、いいライバルとして競っていた──筈だった。



2年にもなると、試合の出場機会が増えてくる。

そしたらやっぱさ、スカウトとかも気になるわけで。

あの人はあの学校のスカウトだ、先輩が推薦貰ってた、なんて話が飛び交うことは、最早日常的になっていた。



まぁ、みんながみんなそうだったわけじゃない。

俺は野球が出来れば高校なんてどこでもよかったし、こだわりなんて一切なかった。