巡逢~茜色の約束~

「ちょっと待──」



引き止めようとした俺の手は、するりと空を切る。

仕方なく後を追うと、キッチンで美生が立ち尽くしていた。



「……どうしたんだよ」

「お、お好み焼きの生地が……出来上がってる……」



目を丸くして振り向いた美生に、最早笑うしかない。



「あまりに気持ちよさそうに寝てたから」

「そ、それで千速くんが……?」

「……まぁな。いつ起きるかわかんなかったから、まだ焼いてねぇぞ」



言いつつ、半ば放心状態の美生の前を通り、蛇口を捻る。

水道から流れ出るお湯で手を洗い、作っておいた生地が入ったボールのラップを外した。



それを見た美生ははっとして、俺からそれを奪い取ろうとする。