巡逢~茜色の約束~

専用の粉が、棚から出されて無造作に置かれている。



十中八九、俺が帰って来る時間を逆算して作ろうと思っているうちに、つい寝ちまったんだろうなぁ。

起きたときの反応が容易に想像でき、思わず笑ってしまう。



「ったく、仕方ねぇなぁ……」



そんな言葉をこぼしつつ、俺は袖を捲った。





悲鳴にも似た奇声が聞こえたのは、それから一時間程が経ったときだった。

それは、美生が寝るソファーに凭れ、最近ゴールデンに進出したらしいバラエティーをなんとなく見ていた俺の耳を劈くような声だった。



「ち、千速くん……!」

「……はよ。起きたか」

「わ、私寝て……?」

「あぁ。それはもう、爆睡」



からかうように言った俺に対し、美生は顔面蒼白。



「ごっ、ごめんね……!もうこんな時間……!」

「……全然。疲れてたんだろ」

「でも寝るなんて……。ごめんね、今すぐ作るから!」