巡逢~茜色の約束~

“特別”と言ったって、色んな捉え方がある。

だけどこの話の中での意味ははっきりしていて、それをわからないほど美生も鈍感ではなかった。



「ある、んだと思う」

「何そのふわふわした答え」

「だって……この想いは絶対に叶わないし、叶えようとも思わない。だから、あるって断言は出来ないなって」

「……なんで、叶えたいと思わねえの?」



映画なんてそっちのけで、俺達は向き合う。

テレビから流れる爆発音も、全く耳に入ってこなかった。



「簡単だよ」

「……」

「自分の気持ちを犠牲にしてでも、彼に幸せになってほしいから。だから、私のことはどうでもいいの」



そう言って儚く笑った美生を見て、胸の奥がちくりと痛んだ。

美生にここまで想われるなんて、一体どんな人間だろう。

自分を犠牲になんて、余程相手のことが大切じゃなきゃ、言えない。