それは今日も誰の耳にも届かず消えていく──筈だった。



「随分と悲しいこと言うんだね」



風に乗って流れてきた、苦しそうな高い声。

気がつくと目の前に影が出来ていて、恐る恐る顔を上げるとそこには──



「……っ⁉︎」



足音なんてしなかったのに。

気配など感じなかったのに。



目の前に立つ人物を、思わず凝視してしまう。



「誰……」



無意識に呟いた言葉に、その人物はポニーテールを揺らしてにっこりと笑った。



「柊美生(ひいらぎ みお)!」