巡逢~茜色の約束~

「……なんだよ」

「千速くんも行こうよ」

「俺はいいよ。お前だけで行ってこい」



その言葉を聞くなり更に顔をむくれさせる美生に、苦笑しか返せない。

すると、美生は俺の横にどかっと腰を下ろした。



「千速くんが行かないなら、私も行かない」



そう言って、太陽の光がキラキラと輝く海を見つめる。

その目は儚いような、それでいて、強いような。



「……馬鹿じゃねえの」



明らかな逃げを、君は見抜いただろうか。

何から逃げているのか、自分ではそれすらもわからないけど。



どれだけそうしていただろう。

夕日が水平線の向こうに姿を隠し始めた頃、美生が俺の名前を呼んだ。



「……何」



ドキッとしたけど、それを見抜かれぬよう平常心を装う。

だけど、美生はそんな虚勢すらも一瞬にして打ち砕いた。