巡逢~茜色の約束~

呆れ混じりの俺の言葉に、美生は大きく頷いた。



「ありがとう、千速くん!」



美生の楽しそうな姿を見て、少しだけ気が緩む。



この一瞬だけは、何も考えずに過ごそう。

過去からも今からも、そして未来からも目を背けていいと、自分自身に許可を下した。





「千速くん千速くん!私、ペンギンショー見たい!」

「まずはエイとかジンベエザメだろ」

「いきなりごつすぎるよー。クリオネとかクマノミとか見ようよ」

「なんだよその小さ過ぎる生物は」



入るなりギャーギャーと騒ぐ俺達を見て、フロントの女の人がクスクスと笑っている。

それに気付いた俺は、ゴホンと大きな咳払いをして、スタスタと歩き始めた。



「ちょっと千速く……」

「行きたいんだろ、ペンギンショー。時間確認しに行くぞ」

「……!」