「と、言うことだが。」

 会長と呼ばれる存在は、一統を見廻しなが
ら、そう述べる。

「ハイ。」
「どうぞ、岩淵。」
「はい。確かに、会則にはそのような禁則事
項は存在しません。しかし、先程の昆野君の
言を借りれば、伝統的ではない、と申したい
のです。」
「伝統的ではない…か。」
「はい。このイベントは非公式ではあります
が、他校、また他のイベントにおけるミスコ
ンのようなものです。そして、この四大妖精
に選ばれた者は、この学芸都市におけるモデ
ル活動、演劇、生徒会内の重要なポスト、そ
の他諸々の芸術活動に任意に参加、協力する
権利を与えられます。あくまで、"非公式に"
ですが。
 そして、その権利を行使するときに、単位
や成績に影響、もしくは何らかの賞の授与や
僅かな払戻金等の付与がなされます。
 もし、今迄通りの体裁で四大妖精に選ばれ
た男が権利を行使しようとして、果して上手
く機能するでしょうか。」
「確かに、その権利は多くの場合、女性とし
ての魅力で以って円滑に機能し、活動してい
たからね。」
「ハイ。会長。」
「どうぞ。千田君。」

 千田、と呼ばれた女生徒は、踏ん反り返り
ながら意見を述べる。

「今、言ったのは四大妖精として選ばれた
後の話でしょ?
 ウチはその前に聞きたいんだけど、例え候
補に入ったとして、こいつらが四大妖精とし
て選ばれるのは高等部に入ったときでしょ?
 で、その年の"せんげん祭"で投票が行われ
て最終的なその学年の四大妖精が決定するの
よね?じゃあ、ミスコンのようなこのイベン
トの候補に男がいたとして、誰が投票する?
 一部の物好きは投票するかもしれない。で
も、ウチなら絶対男に投票はしないけど?」

 だまって聞いていた会長が返す。

「なるほど、つまり彼には誰も投票しないだ
ろう。そして、投票されない人間を候補にあ
げるのはおかしい、と千田君は言いたいわけ
だね?」
「そーね。」
「もちろん、私もそこまで考えてみた。しか
し、現場で候補者を探してくる者達にも、何
か理由や考えがあるんだろう、とも考えた。
 それで、なぜ彼が候補者になったか、調べ
てみたんだが、見るかね?」