白樺は空を見上げた。 そして、立葵は泣いていた。

 夏雅美は,氷の様な人を惹きつけ難い雰囲
気を纏ってはいるが、逆に人を惹きつける。
 お高いとか冷たそうだとか言ってる奴等は
何一つわかっていないと言っても過言ではな
い。
こいつは確かに愛想は無いが、それは見た
目だけ。
 こいつの優しさ、気遣いといった内面性の
高さは、日本人が失って久しく、多くの人に
見倣って欲しいもの。
 それに気付いた人たちが、夏雅美を慕って
くる。
 「夏雅美お姉様~」と、目がハートの"女
子の"後輩に捕まっているくらい。
 女にモテるタイプだな。

そして、陵。
一緒に居ると確かに喧しいが、逆にそこが
良いところ。誰とでも仲良くなっちまう。
ムードメーカーで美人とくれば、男女問わ
ず人気がある事は言わずもがな。
 また、肩まで伸ばした黒髪をヘアクリップ
でアップにした髪型、それを本人は好んで結
うが、その後ろ姿、特にうなじは多くの男子
を魅了している!
 下駄箱に山の様にラブレターが詰まってる
事なんかしょっちゅうだ。
 しかも、それ全てに目を通す思い遣り溢れ
る奴。
 褒め過ぎたか?

そして、我が妹ながら、その天然系のキャ
ラ故にあらゆるファン層を獲得した、椛!
 ふわふわのショートカットに大きい目。
いつも笑顔を絶やさず、その甘い萌え声!
どこか神秘的なその視線。
そして、巫女!
 これで、これで彼女を護ろうとしない男が
いるだろうか?いや、いまい!
 …褒めてて、これ以上ない位に恥ずかしく
なって来た。
これ以上は触れたくない事もあるし.

きーんこーんかーんこーん

 一限が始まる前の予鈴が鳴ると、同時に外
にいた生徒たちがワラワラと教室に入ってく
る。
 うちの学校は朝のホームルームは無い。 
 ホームルームは四限が終わって、昼休み、
そしてホームルーム、となる。これは高等部
から、殆どの授業が選択性になり、一限から
皆バラバラの教室で授業を受けるようになる
ためだ。
 俺達中等部もまた、一限から授業となる。
今日の一限は国語だ。鞄から国語の教科書と
ノートを取り出し、机に並べる。
 よし、準備完了だ。
本鈴が鳴る迄に、隣の夏雅美に倣って窓の
外をぼけーっと眺める。