白樺は空を見上げた。 そして、立葵は泣いていた。

 そういえば,"役目"と言ったが、双子だか
らなのか、俺達だけなのか知らないが、なぜ
か小さい時から俺がやっている事を椛はあま
りやらず、椛がやっている事を俺はあまりや
らなかった。
 喩えて言うなら…そうだな…昔読んだ漫画
でコピーロボットって言うのが出てきたが、
それはロボットが本人そっくりに変身して、
その日ロボットが経験したことを、額をくっ
つける事で経験を同期化出来ると言う代物だ
ったと思う。
 それと同じ様に、俺達も別々の事を経験し
て、それを互いに分けあえばいい、とか無意
識に思ってたんじゃないかな。
 結果、こいつは家では全く勉強しなくなっ
たが。

「ずーと集中してるし。」

そう言って、集中する真似をする椛。

「そうか?」
「そうだよ、話し掛けても生返事だし。他の
人達がいつ乗ったのかも知らないでしょ。」
「ん…そうだな、誰が乗るかなんて、あまり
興味ないし。誰か珍しい人でも乗ってた?」
「むふふ~な・い・しょ~」

何が「な・い・しょ~」なんだかわからない
が、そう言われると気になってしまうのが俺
だろ。
 帰りにも乗って来るだろうか.

「サキちゃ~ん!おはよ~!」

 正門の少し先に人影が見えた。
 そいつは振り返って満面の笑みで手を振り
返す。

「も~み~じ~!おっはよう!会いたかった
よ~!」
「私もだよ~!むふふ~今度うちに泊まれば
いいのに~!」
「おおっ名案っ!今度泊まりに行かせてもら
うわ!」

 こいつは荒屋 陵。陵と書いて「ミサキ」
と読む。だから、椛は「サキちゃん」って呼
んでいるわけだ。

「おいおい、何勝手に話しまとめようとして
んだよ。
椛だけでもうるさいのに、お前まで来たら
どんだけやかましくなるんだよ。」
「べーっ!あんたなんかに許可を求めてませ
んっ!あたしは椛と話してるのっ!」
「だー!お前が来ると勉強が出来ないんだ
よ!」

椛と陵が組むと,騒音公害だ.