さらに数日後、事件が起こった。
「おい」
誰かに、声をかけられた。ぶっきらぼうで、めんどくさそうな、
だるそうな声。だけど、低くてどこか優しい声。
振り返るとそこには…
「ち、ちこ君!?」
あ、しまった…
自分の中だけで作ってたあだ名で呼んじゃった…
「ち、ちこ君? なにそれ? 花奈、大丈夫?」
うぅ…っ。萌、今の忘れて…っても、無理か。
どうしよう。ここまでくると、誤魔化しが思いつかない。
「え…あの、いやぁ…そのぉ…」
戸惑っている私に、助け舟を出してくれたのはちこ君。
「なんだかしらないけど、俺のこと、覚えてないわけ?」
あー、恥ずかしいよー。
まさか本人の前でちこ君とか言うとはおもわなかったなぁー。
うっかりしてた。少し反省…
ってかさ、今、この人なんて言った?
「あ、あの、もう一回言ってもらえます?」
ちこ君は、アハッと笑ってからもう一回言っくれた。
「だからさ、俺のこと、覚えてるのかって聞いてんの」

