彼女、上村アカリは、下の名前をどう書くか知らないくらいの関わりで、部活の時軽く言葉を交わしたことがあるだけだ。ただ、大人びた顔立ちと、赤みを帯びた茶髪の一つ結びがとても印象的だった。 「上村さんは?どうしてここに」 「え、あっ、そうだった。スケブ取りに来たんだ」 彼女ははっとしたように言うと、緋色の表紙のスケッチブックを手に取った。 表紙にはAkari、と綺麗な筆記体で名前が書かれている。 「もう6時なのね。夕焼けが、」 彼女は不意に呟き、不意に噤むと、僕の名前を呼んだ。