「紺ちゃーん。一緒に帰ろ」
中学の時から一緒で彼女である茜に言われる。
茜は、紗和と同じく、俺から逃げていかなかった俺の大切な人である。
「紗和もいるぞ」
「全然いいよー」
茜はすごく優しいし、いい子だ。だから…すごく…好きだ。
本当に茜にはお世話になってるし。
「帰ろーか」
「うんっっ」
茜と手を繋ぎ、紗和が隣で歩く。電車に乗って…いつも通り帰る。
そう…いつも通り。
「あの…車…」
茜を家へ送ろうとしていたとき、俺たちが歩いている反対側で知っている車が通った。
「…紺ちゃん?」
あの車の運転手は桃里さん。その後ろで座ってたのは葵だった…。
「こぉーんちゃぁーん」
なんだよ、あの2人。てか、なんだよ、桃里さんのやつ。
葵を迎に行って、俺は迎にこねーのかよ。最低だな。
まぁ…茜と紗和と帰れてるからいいか。
「もう。紺ちゃん、気づけ!!」
パシンと俺の目の前で手を叩く。
「ごめん、茜」
「いいけど…どうかしたん?」
茜に言わない訳じゃない。だけど…何故か言えなくて。
口が開かないって言うか…。不思議だ。
「大丈夫…ごめん」
「いいよ。あ、私帰るね」
「あ…ごめん。バイバイ」
「うん。バイバイ」