【例1】
■(これを絵と思ってみよう)



   ..
  .○.     .
   .     .○.
       .
      .○.
       .








 とあるパーティ会場。

 そこではいま、十数年ぶりの再会に花を咲かせる人々がいた。

 そう、同窓会というやつだ。

 立食タイプの会場にはいくつかの丸テーブルがあり、そこにはそれぞれネームプレートが置かれていた。

 元はクラスメイトといっても十年一昔、それだけ時間が経ってしまえば顔も姿も変わってしまうものである。

 しばらくの間、各々自分のネームプレートが置かれた席で歓談していたものの、場の空気に慣れてくるとふい、と好奇心が頭をもたげる者も出てくる。

「初恋のあのコは今どんな感じなんだろう?」

 そんな考えが浮かぶともう目の前の“元”女子との会話など失礼極まりないなことだと思いつつも上の空。

 とうとう男は、

「ちょっとごめん……」

 と、自分のテーブルを離れると別のテーブルへと向かった。

 顔を見るよりもまずネームプレートをしかめ面で見つめながら歩く。

 なぜなら顔で判断する自信がないからだ。

“女子”と“女性”の差はこれはもう大変なもので、それが化粧のせいなのか年齢のせいなのか、積み重ねてきた人生のせいなのかはわからなかったが、とにかく。

 男は顔で見分ける自信がなかった──

「あ……」

──はずだった。

 視線が、釘付けになる。

 彼女だ。

 間違い、ない。

 記憶の中の“女子”と目の前の“女性”が、ほんの僅かなズレを感じさせつつも見事に重なる。

 男は考えるよりも先に彼女に近づいていた。

 そして、

「──さん?」