まずはこの文を読んでみて下さい。





 眠っているわたしの顔を眺めながら、涼は押し殺すようにしてため息をついた。





さて、この文章のどこが駄目でしょう?


答えは──全部です。

細かい描写云々ではなくて、1人称という視点の関係上、


『本人が見ていないものを描写してはいけない』


という大原則があるんです。

つまり先ほどの文は“私が寝ているにもかかわらずみえてしまっている”という“絶対にありえない”描写ということなんですね。

同じように、気絶してしまえばその瞬間から目覚めるまで一切描写してはだめだし同じ時間に別の場所のシーンを書くことも出来ないの。

例えば、





 わたしが自転車のチェーンを直しているいまこの瞬間、涼は地球の裏側で壁に逆立ちをしている。





と、いうことですね。

本人が寝たり気絶するたびに必ず幽体離脱したり、同時刻のどんな所でも視ることの出来る能力の持ち主という設定であるならば可能でしょうけれど。


これが、1人称で書くさいに気を付けなければいけないことなのです。