オオカミくんと秘密のキス

あんな事があった後だけど、何故か心はスッキリしてる…あの女子達に凌哉くんがガツンと言ってくれたおかげかな。

だいぶ落ち着いてきた私は、かぶっていたYシャツを取りふと隣にいる凌哉くんに目をやった…






「な゛っ……!!!」


凌哉くんは、さっきの私のアイコラ写真を嬉しそうにニヤニヤしながら眺めていた。




「ななな、何やってんのよっっ」

「バカ。やめろ」


写真を取り上げようとすると、凌哉くんは必死で写真を私から遠ざけた。





「見ないでよ!それ返して!」

「嫌だ!これは俺の宝物にするんだ」

「はぁ?」


何言ってるの…?




「た、宝物って…そんなの持っててどーすんの?」

「…んなこと男に聞くんじゃねえよ」


ニコニコして笑う凌哉くんに、私の顔はカァァと赤くなった。





「サイテー!本当に信じられない!!返してよ!そんなの燃やしてやる!!!」


凌哉くんの腕をバシバシ叩くと、凌哉くんは私の手を掴み急に真剣な顔をする。




「これはマジな話…この写真は俺が処分するから。お前がやるのはさすがにキツイだろ」

「…」


その言葉を聞いてまだじわっと目に涙が滲む。そんな私を見て凌哉くんは私の頭をポンと撫でてくれた。




なんだ…ふざけてるんじゃなくて、私の事想ってやってた事だったんだ。サイテーなんて言っちゃって悪かったな。




「もう一回聞くけど…やっぱこれお前がもらっちゃダメ?」

「絶対ダメ!」

「ちぇ」


やっぱり多少はふざてたみたい。悪かったなんて思って損しちゃったな。







「これからどうする?お前に合わせるけど…よかったらどっか行かないか?」

「え…」


どっかっていうと…?


凌哉くんはスっと立ち上がり、私に優しい顔を向けて手を差し延べた。そして嬉しそうに笑うと一言こう言った。







「デートしよ」


どんよりとしていた空に一瞬太陽の日が差して、気持ちいい風が私達を包み込んだ。

私はドキドキしながら凌哉くんの手を握り「うん」とゆっくりと頷いた。











ガタンガタン…


凌哉くんに目的地を教えてもらえないまま乗客が少なく空いている電車に揺られ、私と凌哉くんは隣同士で座っていた。




「ふぁーあ…」


窓の外を眺めていると、隣にいる凌哉くんが大きなあくびをする。





「寝不足?」

「まあな。昨日寝たの遅かったから…久しぶりに母親と会ったから色々と話しててさ」

「あ、そっか。昨日はお母さんお休みだったんだっけ?…せっかく誘ってくれたのに行けなくてごめんね」


嘘ついてたりして本当に申し訳なかったな…




「母親とは会おうと思えばいつでも会えるから気にすんなよ。それにお前の気持ちもわかるしな…昨日もあいつらにちょっかい出されたんだって?」

「え…あいつらって…どうして知ってるの?」


ってゆうか知ってたんだ…





「…前川(まえかわ)に聞いた」

「寧々ちゃんに?」

「ああ。昨日の放課後話しかけてきて、お前の事が心配だからって教えてくれた」

「そうだったの…」


明日寧々ちゃんにお礼言わないとな。寧々ちゃんが凌哉くんに伝えてくれたから、私達の関係はこじれずに済んだってことだもんね…

昨日の夜に凌哉くんがうちに訪ねてきた時、私の責めなかったのは寧々ちゃんから事情を聞いていたからだったんだ…

もしかして…それを聞いて昨日は心配して来てくれたのかな…?







「あーぁ。久しぶりにキレたら疲れた…ちょっと充電させて」

「っ…」


そう言うと凌哉くんは、私の肩にもたれかかって来て目をつぶった。





「ちょ、ちょっと寝ないでよ…どこで降りるかわかんないし」

「寝ねえよ。こうしてるだけだ」


寝てないならますます恥ずかしいんだけど…お客さん少ないとはいえ一応人前だし…

それにこんなことしてるなんて、周りから見たらカップルみたいだよね。私達実はまだ付き合ってないし…

これからデートするけど本当は付き合ってないなんて…まだ返事してないのは自分なのにじれったくなってきたよ…



今日中にタイミングを見て凌哉くんに告白しよう。そしてちゃんと彼女になろう…










「うわぁーすごい!」


1時間程電車に揺られてやって来たのは、横浜の中華街。