沙世は泣きながらそう言うと、涙を手で拭った。




「寝てる尾神くん見てたら自分も眠くなっちゃって…ちょっと寝てただけだもん。そんなの尾神くんだけ…そもそも今日家に来たのも尾神くんだからだからねっ」


涙を拭っても流れる涙をまた手で拭き、時々怒ったような口調になる沙世。





「無防備だったかもしれないけど…ちょっとだけ尾神くんこと好きだから…まだちゃんと好きかわかんないけどちょっと好きだからだもん…それはいけないの?」


うぅと両手で涙を拭く沙世。



やべ…かわいい。






「ごめん…ちょっといじめすぎた」


沙世を横からギュッと抱きしめると、沙世は俺の胸に顔を埋めてくる。


反則だろこれ…





「全部嘘だから。本当にごめん」

「…ぅん」


もういいや嘘で。そんなことどうでも良くなった…

いや…どうでもいいかな?これも惚れた弱みってやつか。






「…沙世」


沙世の顔を覗き込んで涙を手で拭くと、沙世はじっと俺を見て来た。


…ヤバイ。もうセクハラしないって決めたのに……でも…




俺は沙世のあごに手を添えて、そっとほっぺにキスをした。




ほっぺならセーフだろ。ギリギリセクハラにはならないよな。


チラッと沙世を見ると、まだ涙を流しながら顔が赤くなっている。



かわいい。


俺は沙世にピタリとくっついて、後ろから腰を回した。






「…な、何?」


顔と目を赤くした沙世が、恥ずかしそうに俺を見る。




「少しだけこうしててもいい?」

「え…あ、うん…」


下をうつむく沙世の耳は赤くなっていて、余計にかわいいと思った。



無防備な沙世にムカついていじめたわいいけど…結局沙世の涙には勝てないな。

泣いている沙世を見た瞬間、自分が悪者になった気がしたと同時に…沙世がすごくかわいそうに思えた。




「尾神くん…?」

「ん?」

「洗濯の乾燥終わったみたい…」

「いいよ洗濯なんか」


洗濯なんかに俺の幸せな時間を奪われたくない。




「でも畳まないと…」

「後ででいいよ」

「…そう」


沙世の肩に力が入っているのがわかる。俺が近くにいるから緊張してるんだな…

見た目は大人っぽいのに、こういう沙世の一面を見ると純粋なんだなって思えて余計に好きになりそうだ。




「隆也達いつ帰ってくんだろうな?」

「どうだろう…お母さんは夕方くらいって言ってたけど、車で行ったから帰り道の混み具合によるのかな」

「そうか。せっかくだから晩飯は皆で食いたいよな」

「そ、そうだね…」


沙世の緊張を和らげようと世間話をしたつもりだったのに、沙世はまた恥ずかしそうな顔をして俺から目をそらす。




「そんな緊張すんなよ。もうキスもしてる仲なんだしこれくらいどってことねえだろ」

「で、でも上裸じゃん!」

「あ?」


更に沙世に近寄ると両手で自分の目を隠す沙世を見て、更に俺のいじめたいスイッチが発動される。




「いいじゃん。この際だから裸の付き合いでもしようじゃないか」

「ちょっ…やめ!」


沙世をぎゅぅぅっと思いっきり抱きしめて、自分の胸に沙世の顔を埋める俺。暴れてる沙世を押さえ込むようにして更に抱きしめた。