弟達も食べるから多めに切っておこう。
「…うまそ」
するとトイレから戻って来た尾神くんは、テーブルに置いてある雑炊を見てボソッと言う。
「ソファーで食べる?持っていこうか?」
「いやここでいい。いただきます」
土鍋の横に置いておいたレンゲを手に持ち、丁寧に手を合わせると尾神くんは雑炊を食べ始めた。
「…味どうかな?薄くない?あ、でも風邪ひいてるからわかんないよね」
「うまいよ。すごいうまい…」
白い湯気が出ている雑炊をパクパクと食べる尾神くんを見て、すごく嬉しくなった。
自分が作ったものを「おいしい」って言って食べてくれるのって今までは家族と友達くらいしかなかったから、気になる男子から言われると改めて嬉しいな。
「おかわりないの?」
「え?作ればあるよ!足りない?」
「うん」
私の作った雑炊を尾神くんは素早いスピードで食べ、土鍋の中はもう3分の1くらいの量しかない。
「すぐ作るからちょっと待っててね!これデザートのりんごいちごだから、雑炊が出来るまで食べててよ」
「ああ」
小皿に乗せたフルーツを尾神くんに出し、私は雑炊の追加を急いで作った。
「はい、お待たせ。熱いから気をつけてね」
「サンキュ」
2杯目の雑炊はさっきよりも量が多く、具もたくさん入れた。
「…お前も食うのか?」
そこの深いお椀に雑炊をよそっていると、尾神くんが私に聞いてきた。
「うん!私も今日の夕食は雑炊にする」
「雑炊じゃ物足りなくねえの?」
「大丈夫!消化にも体にもいいし、それに雑炊つくってたら食べたくなっちゃった!」
私は尾神くんの座っている椅子と迎え合わせに座り「いただきます」と言って、手を合わせた。
「俺だけじゃなくて、隆也の晩飯とかも用意してもらっちゃって悪いな」
「そんないいよ!洋平の友達なんだし、それに具合が悪い時は誰かに甘えていいんだから私なんかで良かったら頼ってよね」
「沙世」
「ん?」
まだ雑炊は食べ終わってないのに尾神くんは立ち上がると私に近づいて来て、私左側の髪をそっと触った。
「尾神…くん…」
金縛りになったように尾神くんから目が離せない…尾神くんは髪を触る手を、そのまま私の頬に移した。
これは…今度こそキスされる…
ドドドド…
「姉ちゃん~!」
勢い良く階段を降りる音がして、私と尾神くんは一瞬で離れる。すると、洋平と隆也くんが慌てた様子でリビングに入ってきた。
「ど、どうしたの?」
「お母さんから電話!」
「え?」
お母さん?
洋平は自分のスマホを私に差し出した。スマホの画面はお母さんと通話中になっている。
「…もしもし?」
とりあえず電話に出る私。
「あ、沙世?洋平から聞いたんだけど…今隆也くんの家でお兄さんの看病してるんだって?」
「あーうん…そうなの。お母さんは仕事終わったの?」
「今打ち合わせ抜けてきた所で、子供達どうしてるかなと思って電話したの。あんた電話繋がらなかったから洋平にかけたんだけど…」
「うそ?ごめん…マナーにしてて気づかなかったかも…」
尾神くん寝てたし、静かにしてなきゃと思って…
「隆也くんのお兄さんて前に話してた沙世と同じ学校の子でしょ?確か凌哉くんだっけ?」
「そうだよ」
隆也くんのことは洋平と仲良くしてるからお母さんも前から知っていたし、尾神くんの事もこの前映画館でばったり会った日に洋平がベラベラと話したので知っていた。
「なら打ち合わせ終わったら車で迎えに行くから、そのまま隆也くんの家にいさせてもらいなさいよ。夜に女子高生と小学生がうろうろしてるのは危ないから」
「迎えに来てくれるの?」
「多分9時くらいになっちゃうけど…明日は休みだしいいわよね。ちゃんと凌哉くんの看病してあげな~とりあえず向かう時にまた連絡するから隆也くん家の住所だけメールしといてね、じゃ」
電話が切れて洋平にスマホを返すと、尾神くんが私に話しかけて来た。
「母ちゃんからか?」
「うん。仕事が終わったらここに迎えに来てくれるって言うんだけど…まだいさせてもらってもいいかな?」
「俺は構わないけど」
「迎えに来れるの9時くらいになっちゃうらしいんだけど大丈夫?尾神くん体調悪いのに、あんまり長居するのは悪いよね」
「そんなの気にすんなよ。むしろお前の母ちゃんが迎えに来てくれた方が安心だ。俺今日は体調悪いからお前らを送っていけそうにねえし…それにちょっとでも長くお前にいて欲しいしな」
尾神くん…
しばらく尾神くんと見つめ合っていると、すぐ近くに弟達がいることをハッと思い出し恐る恐る近くにいる弟達に目を向ける。
洋平は首を傾げていたが、隆也くんに至っては顔を赤くして私達を見ていた。
ま、マズイっ…
「ふ、2人とも!うちのお母さんが迎に来るまでまだ時間があるから今日はいっぱい遊べるよ~」
「え、マジかよっ!やったな隆也!」
「うんっ」
弟達は一気にテンションが上がり、今さっきの私と尾神くんの事なんて忘れた様子。危なかった…
「じゃあ、遊ぶ前に夕飯食べた食器持ってきてね!」
「へーい!」
「はーい!」
「…うまそ」
するとトイレから戻って来た尾神くんは、テーブルに置いてある雑炊を見てボソッと言う。
「ソファーで食べる?持っていこうか?」
「いやここでいい。いただきます」
土鍋の横に置いておいたレンゲを手に持ち、丁寧に手を合わせると尾神くんは雑炊を食べ始めた。
「…味どうかな?薄くない?あ、でも風邪ひいてるからわかんないよね」
「うまいよ。すごいうまい…」
白い湯気が出ている雑炊をパクパクと食べる尾神くんを見て、すごく嬉しくなった。
自分が作ったものを「おいしい」って言って食べてくれるのって今までは家族と友達くらいしかなかったから、気になる男子から言われると改めて嬉しいな。
「おかわりないの?」
「え?作ればあるよ!足りない?」
「うん」
私の作った雑炊を尾神くんは素早いスピードで食べ、土鍋の中はもう3分の1くらいの量しかない。
「すぐ作るからちょっと待っててね!これデザートのりんごいちごだから、雑炊が出来るまで食べててよ」
「ああ」
小皿に乗せたフルーツを尾神くんに出し、私は雑炊の追加を急いで作った。
「はい、お待たせ。熱いから気をつけてね」
「サンキュ」
2杯目の雑炊はさっきよりも量が多く、具もたくさん入れた。
「…お前も食うのか?」
そこの深いお椀に雑炊をよそっていると、尾神くんが私に聞いてきた。
「うん!私も今日の夕食は雑炊にする」
「雑炊じゃ物足りなくねえの?」
「大丈夫!消化にも体にもいいし、それに雑炊つくってたら食べたくなっちゃった!」
私は尾神くんの座っている椅子と迎え合わせに座り「いただきます」と言って、手を合わせた。
「俺だけじゃなくて、隆也の晩飯とかも用意してもらっちゃって悪いな」
「そんないいよ!洋平の友達なんだし、それに具合が悪い時は誰かに甘えていいんだから私なんかで良かったら頼ってよね」
「沙世」
「ん?」
まだ雑炊は食べ終わってないのに尾神くんは立ち上がると私に近づいて来て、私左側の髪をそっと触った。
「尾神…くん…」
金縛りになったように尾神くんから目が離せない…尾神くんは髪を触る手を、そのまま私の頬に移した。
これは…今度こそキスされる…
ドドドド…
「姉ちゃん~!」
勢い良く階段を降りる音がして、私と尾神くんは一瞬で離れる。すると、洋平と隆也くんが慌てた様子でリビングに入ってきた。
「ど、どうしたの?」
「お母さんから電話!」
「え?」
お母さん?
洋平は自分のスマホを私に差し出した。スマホの画面はお母さんと通話中になっている。
「…もしもし?」
とりあえず電話に出る私。
「あ、沙世?洋平から聞いたんだけど…今隆也くんの家でお兄さんの看病してるんだって?」
「あーうん…そうなの。お母さんは仕事終わったの?」
「今打ち合わせ抜けてきた所で、子供達どうしてるかなと思って電話したの。あんた電話繋がらなかったから洋平にかけたんだけど…」
「うそ?ごめん…マナーにしてて気づかなかったかも…」
尾神くん寝てたし、静かにしてなきゃと思って…
「隆也くんのお兄さんて前に話してた沙世と同じ学校の子でしょ?確か凌哉くんだっけ?」
「そうだよ」
隆也くんのことは洋平と仲良くしてるからお母さんも前から知っていたし、尾神くんの事もこの前映画館でばったり会った日に洋平がベラベラと話したので知っていた。
「なら打ち合わせ終わったら車で迎えに行くから、そのまま隆也くんの家にいさせてもらいなさいよ。夜に女子高生と小学生がうろうろしてるのは危ないから」
「迎えに来てくれるの?」
「多分9時くらいになっちゃうけど…明日は休みだしいいわよね。ちゃんと凌哉くんの看病してあげな~とりあえず向かう時にまた連絡するから隆也くん家の住所だけメールしといてね、じゃ」
電話が切れて洋平にスマホを返すと、尾神くんが私に話しかけて来た。
「母ちゃんからか?」
「うん。仕事が終わったらここに迎えに来てくれるって言うんだけど…まだいさせてもらってもいいかな?」
「俺は構わないけど」
「迎えに来れるの9時くらいになっちゃうらしいんだけど大丈夫?尾神くん体調悪いのに、あんまり長居するのは悪いよね」
「そんなの気にすんなよ。むしろお前の母ちゃんが迎えに来てくれた方が安心だ。俺今日は体調悪いからお前らを送っていけそうにねえし…それにちょっとでも長くお前にいて欲しいしな」
尾神くん…
しばらく尾神くんと見つめ合っていると、すぐ近くに弟達がいることをハッと思い出し恐る恐る近くにいる弟達に目を向ける。
洋平は首を傾げていたが、隆也くんに至っては顔を赤くして私達を見ていた。
ま、マズイっ…
「ふ、2人とも!うちのお母さんが迎に来るまでまだ時間があるから今日はいっぱい遊べるよ~」
「え、マジかよっ!やったな隆也!」
「うんっ」
弟達は一気にテンションが上がり、今さっきの私と尾神くんの事なんて忘れた様子。危なかった…
「じゃあ、遊ぶ前に夕飯食べた食器持ってきてね!」
「へーい!」
「はーい!」



