「話してくれてありがとう…私も柳田くんと春子がうまくいくといいなって心から思うよ」

「ハハ、ありがとな」


キーンコーン
カーンコーン



ちょうどいいタイミングでチャイムが鳴ると、廊下の壁に寄りかかっていた柳田くんが体を上げた。





「今日の放課後、お前が暇ならあいつの家に行ってやってよ。あいつすごい喜ぶと思うから」

「えっ…」


それってどうなの…?まだ付き合ってるわけじゃないのにちょっと図々しくないかな?





「多分…あいつめんどくさいとか言って、ご飯もろくに食べてないと思うんだよね。それに凌哉のお母さんも、今泊まり込みの仕事があるから帰って来れないらしいし…」

「そうなの?」


じゃあもしかして…薬も飲んでないのかな?お母さんがいないってことは、看病してくれる人がいないってことだもんね…






「もし行けなくても連絡くらいしてあげてよ、ね?」

「…わかった」


そのとき担任の先生が向こうから来るのが見え、私達は教室に入って席にく。




お見舞いか…

本当に行っていいのかな。迷惑じゃないかな…風邪引いてる時ってそっとして欲しいかな…うーん…




「沙世?」

「へ!?」


そのひの休み時間。尾神くんのことを考えてぼーっとしていると、春子が私を覗き込んでいる。




「ご、ごめん!何の話だっけ?」

「だから次の授業サボろうと言ったの。ちょっと話があるから」

「…話?話って?」


授業サボってまで何話すんだろ…




「大事なは・な・しよ!ほら屋上行こ」

「う、うん…」


なんだろ…春子の顔がちょっと怖かったな。


私はビクビクしながらも春子と一緒に屋上に向かった。そして屋上に着くと、春子はフェンスから空を眺めしばらく何も言わない。



春子何か怒ってるのかな…

私何かしちゃったかな…でも思い当たる節がない……





「沙世さ…私に何か隠してるでしょ?」


しばらくの沈黙のあと、春子は私の方を向いてジロっと私を睨んで言う。




「えっ…隠してることって……そんなの何なもないよ…」

「へえ…じゃあ最近尾神くんと話したり、さっきみたいに柳田くんに呼ばれて廊下でコソコソしてるのはなんなの?」



ギクッ…


ヤバイっ……

さっきの柳田くんのことはさすがに突っ込まれる覚悟はあったけど、尾神くんのことにも気づかれてるとは思ってなかった!




「最近妙に変だよね?気がついたらどっか行ってたりとか…トイレ行くとか言って戻ってくるの遅かったり…」

「え、えっと…」


それは尾神くんから呼ばれた時のことを言ってるんだ。尾神くん…学校ではいつも突然私を呼び出して話したり、たまにこっそりキスしたりとかして来るんだよね。





「もうネタは上がってるの!これ以上言い訳できないよね?さあ吐きなさい、全部言ってしまいなさい」


怖ーい顔の春子にもう否定することも誤魔化すことも限界だと感じた。私は尾神くんのことを春子に話すことにした。







…………


「なんでそんな大事なこと黙ってるのよー!超ショックなんですけどぉ!」


尾神くんとの出会いや今の関係性を全て話すと、春子はブーブーと怒り始めた。





「ご、ごめんね…春子に嫌われると思って言えなくて…」

「なんで嫌うのよ?」

「だって…付き合ってもいない人とキスしたなんて…引くでしょ?」


正確に言うとキスされたなんだけどね。




「引くわけないでしょバカね。沙世が軽い人間じゃないってことはわかってるし、それに沙世だって尾神くんのこと少しは気になってるから心許してる部分あるんじゃないの?」

「う、ん…」


さすが親友!私のことをよくわかってらっしゃる。





「じゃあ今は、立場的に尾神が沙世からの返事待ちって感じなんだ?」

「そう…私のこと待ってくれるって…」