オオカミくんと秘密のキス

聞き覚えのある声がした方に目をやると、ギャラリーの中には凌哉くんのお母さんの響子さんの姿が…!





「沙世~!イケイケー!!」


おまけに響子さんの隣にうちのお母さんもいて、まるで応援団のように私達に向かってエールを送っている。



は、恥ずかしい…

高校生にもなって…これはないでしょ!




私がお母さん達から目をそらすと、凌哉くんは手錠て繋がれた互いの手をぎゅっと強く握った。





「好きだよ沙世」


見上げた凌哉くんの顔は優しくて、まるで王子様みたいだ…



私も凌哉くんが好き。

大好き…


この想いはちゃんと伝わってるかな…








「さぁ!続いては足つぼ地獄だー!床一面の足つぼの上を2人で歩いてくれーい!」


次の試練は足つぼ地獄。

教室の床にデコボコの小石のようなものが一面に敷き詰められた、足つぼのシートをカップルで裸足になって歩くというものらしい…





「足つぼだって…痛そう」

「痛そうっつーか普通に痛いだろ」


入り口で上履きと靴下を脱ぎなから、足つぼシートを見ただけで足裏が痛む。





「怖いなぁ…」


この競技って結構鬼じゃない?

辛いとか痛いとかさ…

高校生の考えることって、意外と残酷なのね…





「せーの」

「いったーーーいっ」


足つぼシートを踏んだ途端、足裏に激痛が走りすぐにその場から動けなくなった。





「凌哉くん!痛いよ~」

「頑張れ!俺だって痛いんだから」


痛いとか言ってる割に、凌哉くんは結構タスタ進んでない?

こういうのって立ち止まらないで進む方がいいってこと?でも痛過ぎて足が動かないよ~






「いたたた…」


後ろから樹里の声がして振り返ると、苦戦しながらも割と足つぼシートの上をスイスイと歩く樹里と絢人。



さすが体育会系!

あれ?運動神経とこれって関係あるかな?


足つぼって健康かどうかってことか…運動神経どうのっていう以前に、あの2人は健康そうだな。

だからそこまで痛くないのかな…羨ましいよ。





「痛いよぉ!」

「頑張れ春!」


春子と柳田くんも足つぼエリアに到着して、仲良く手を繋いで歩き始めた。


あっちは春子は辛そうだけど、柳田くんは余裕あるみたいだな。春子をうまくリードすればクリア出来るね!





「ほら…ぼーっとしてないで行くぞ」

「あ、うん」


友達カップルを観察していた私を、一歩先にいる凌哉くんが手を軽く引っ張った。






「痛っ」


一歩足を前に出すだけで、体重が足裏にかかってつぼを刺激して激痛が走る。




痛過ぎる~~~~~~!!!

これはマジでやばいっ







「しょうがねえな…」

「え…きゃっ」


突然凌哉くんが私をひょいと抱え、手錠が繋がった手で抱っこした。






「りょ、凌哉くんっ?」

「じれったくて見てられねえよ」


そう言って、私を抱えながら足つぼシートの上を歩く凌哉くん。





「降りる!重いでしょっ」

「重くねえよ」

「でもっ…私を抱えてたから余計に痛くない?」


普通に歩いてるだけでも激痛なのに…






「そうだけど…お前が痛いとか言ってるの見たくないから」


ボソッと言う凌哉くんに、私は胸がドキッと高鳴った。